幼稚園から帰ってきて、疲れがたまっている時間帯。あるいは、寝起きで機嫌が戻りきっていない時間帯。
納得のいかないことや嫌なことがあった瞬間に、子どもがとても大きな声で泣き叫び始めます。
私はHSPの父親です。子どもの泣き声と大声を聞き続けるのが、正直とてもしんどいです。心にも体力にも余裕がない日は、なおさらです。
「親なのに、子どもの泣き声がつらいなんて」と、自分を責めていないでしょうか。
先に結論を書きます。子どもに危険がなければ、父親(母親)が一度離れて自分の心を守ることは、子どもを見捨てることではありません。次に子どもの話を聞くための準備です。
本記事では、離れてよい場面と離れてはいけない場面の判断表、離れるときの一言、落ち着いたあとの戻り方を、私が実際にしている手順のまま書きます。
子どもの泣き声がつらいのは、愛情不足ではありません
子どもの泣き声がつらいと感じると、多くの親は「親なのに」と自分を責めます。私もそうでした。
ただ、私自身の反応を振り返ると、はっきり分かったことがあります。私がつらいのは、子どもの声の大きさそのものではありませんでした。
子どもがゲラゲラ笑っているときの大きな声は、私にとってまったく不快ではありません。むしろ、聞いていて楽しい声です。
私がしんどくなるのは、泣き声や、怒りや嫌な気持ちが乗った大声を聞くときです。同じ子どもの、同じくらいの音量の声でも、声に乗っている感情によって、私の消耗の度合いがまったく違います。
つまり、泣き声がつらいのは、子どもへの愛情が足りないからではありません。私の場合は、ネガティブな感情が乗った強い声を受け止める容量の問題です。愛情の量と、声を受け止める容量は、別の話です。
先に答え:危険がなければ、条件つきで一度離れてよい
本記事で一番伝えたい答えを、先に書いておきます。
- 子どもに危険がないとき:父親(母親)は一言添えて、一度離れてよい
- 子どもに危険があるとき:父親(母親)はそばにいる。子どもの安全が第一
- 父親(母親)に余力がないとき:離れるなら、安全を確保できる距離と方法を選ぶ
本記事でいう危険とは、ほかの人にけがをさせる、物を壊す、自分自身を痛めつける、命にかかわる環境下にいるという様子のことです。細かい判断の分け方は、後半の判断表で説明します。
なお、私はHSPを自認していますが、HSPは心理学上の概念で、医学的な診断名ではありません。本記事は「HSPだから泣き声がつらい」と決めつけるものではなく、「泣き声がつらい父親が、どう動けば親子ともに消耗しないか」を書くものです。繊細な子どもとの向き合い方の全体像は、繊細な子どもを育てるパパのためのガイドにまとめています。
HSPの父親に、泣き声と怒鳴り声が刺さる仕組み
HSP(Highly Sensitive Person)は、心理学者のエレイン・アーロンが1990年代に提唱した概念です。音や光、人の感情などの刺激を、深く処理しやすい気質のことを指します。
刺激を深く処理しやすい人は、同じ場面にいても、受け取る情報量が多くなりやすいと言われています。そう感じる人が多い、という段階の話であり、HSPの人全員に当てはまるわけではありません。
以下では、私自身の体験をもとに、泣き声がなぜ父親に強く刺さるのかを分解します。
刺さるのは音量ではなく、声に乗った感情
先ほど書いたとおり、私は子どもの笑い声なら大きくても平気です。一方で、泣き声、怒鳴り声、叱る声はしんどくなります。
さらに、私自身が叱られていなくても、苦しくなることがあります。妻が子どもを叱っているとき、叱っている声も、叱られている子どもの様子も、私にはすごく伝わってきてしまいます。
私の場合は、声の大きさよりも、声に込められた怒りや悲しさを受け取ってしまうことが、消耗の正体だと感じています。
音が重なると、一気に限界に近づく
もう1つ、私がはっきり自覚している条件があります。音が重なる空間です。
テレビの音量が大きい、音の出る教材が鳴っている。さらに、叱る声や泣き声が重なる。音が1つずつなら耐えられても、何種類も同時に鳴ると、私は一気に限界に近づきます。
子どもの癇癪は、たいていテレビや教材の音が鳴っている日常の中で起きます。父親の耳には、泣き声だけでなく、周りの音もまとめて届いています。泣き声だけを見て「この程度で限界になるのはおかしい」と自分を責める必要はありません。
限界のときほど、強い言葉が出やすい
アーロンらの研究チームは、2023年に発表した論文で、刺激を深く処理しやすい人は嫌な気持ちの最中にいるとき、やや衝動的に動きやすい傾向がある、という結果を報告しています(Acevedo, Aron ほか 2023/アーロンによる解説)。
この研究は大人を対象にした1本の研究で、子育ての場面を直接調べたものではありません。研究の対象が大人であっても、私には思い当たる節があります。余力がないまま子どもの泣き声を浴び続けると、私の声も強くなりやすいのです。
だからこそ、限界に達してから我慢するのではなく、限界の手前で一度離れる、という順番が大切になります。
HSS型HSPでも、つらい刺激はつらい
私は、HSPの中でも「HSS型」と呼ばれるタイプに当てはまると感じています。HSSは、新しい刺激や変化を求める気質のことです。
アーロンは、HSPとHSSは別々の特性で、HSPの人の約半数はHSSの特性も持っている、と説明しています(Psychology Today/エレイン・アーロン)。
私は、外出先での新しい体験や、初めての場所の刺激は楽しめます。ただ、不快な刺激は、やはりつらいです。
「刺激が好きなはずなのに、家の泣き声だけ耐えられないのは、わがままではないか」と感じる父親(母親)もいると思います。私の場合、楽しめる刺激と消耗する刺激は、はっきり別物です。刺激が好きなことと、泣き声がつらいことは、矛盾しません。
なお、仕事から帰った直後に家族へイライラしてしまう悩みは、HSPの帰宅後イライラの記事で扱っています。帰宅後イライラの記事は「仕事で削れた状態からの切り替え」、本記事は「子どもの声という刺激そのものへの対処」がテーマです。HSPの特性と働き方の全体像は、HSS型HSPの記事にまとめています。
癇癪の最中に離れるのは、見捨てることではありません
「泣いている子どもから離れるなんて、冷たい親ではないか」。離れることに罪悪感を持つ父親(母親)は多いと思います。私も最初はそう感じていました。
ただ、私が何度も経験してきたのは、癇癪の最中は何を話しても子どもに伝わらない、という事実です。
癇癪の最中は、言葉が届かない
子どもが泣き叫んでいる最中に、親が「どうしたの」「落ち着いて」と声をかけても、私の家では言葉がほとんど届きませんでした。
言葉が届かない状態で話し続けると、親の側には「伝わらない」という焦りがたまります。焦りがたまった父親(母親)の声は、だんだん強くなります。
子どもから見ると、泣いている最中に、親の強い声まで浴びることになります。親が余力ゼロのまま向き合い続けることは、親だけでなく、子どもの消耗も大きくします。
離れる目的は、次に話を聞ける状態に戻ること
私が離れる目的は、癇癪から逃げることではありません。子どもが落ち着いたときに、親が穏やかに話を聞ける状態に戻っておくことです。
子どもが落ち着いたタイミングで、親も落ち着いていれば、親子で話ができます。子どもが落ち着いたのに、親がまだ限界のままだと、話し合いの場で親が強い言葉を出してしまいます。
だから、離れるのは「放棄」ではなく「準備」です。
あなたが冷たいのではなく、容量の問題です
子どもの泣き声がつらいのは、あなたの性格が冷たいからでも、親としての努力が足りないからでもありません。
ネガティブな感情が乗った声を受け止める容量には、人によって差があります。容量が小さめの親が、容量を超える声を浴び続ければ、限界が来るのは当然です。
容量そのものは、すぐには変えられません。ただ、離れるタイミング、離れ方、戻り方という手順は、今日から変えられます。次の見出しから、手順を具体的に書きます。
離れる/そばにいるの判断表
離れるかどうかで毎回迷うと、迷っている間にも父親の余力は削られていきます。私は、2つの軸で判断を分けています。
- 軸1:子どもに危険があるか(ほかの人にけがをさせる、物を壊す、自分自身を痛めつける様子があるか)
- 軸2:親自身に余力があるか
| 親に余力がある | 親に余力がない | |
|---|---|---|
| 危険がない | 少し距離を取って、落ち着くまで様子を見る | 一言添えて離れる(次の見出しの3段階を使う) |
| 危険がある | そばにいて、落ち着くまで話を聞く | 妻がいれば妻を呼ぶ。妻がいなければ、父親がそばにいる。子どもの安全が第一 |
判断表の中で一番難しいのは、右下の「危険があるのに、親に余力がない」場面です。
私は、妻がいれば妻を呼びます。妻がいなければ、限界でもそばにいます。子どもの安全より優先するものはないからです。
余力がないままそばにいるときは、話を聞こうと頑張らなくても大丈夫です。子どもがけがをしない、物を壊さないように見守ることだけに集中する形で十分です。話を聞くのは、親子ともに落ち着いたあとで間に合います。
父親(母親)の余力を見分ける目安
余力があるかどうかは、自分では気づきにくいものです。目安の例を挙げます。1つでも当てはまれば、「余力がない」側で判断してかまいません。
- 子どもの泣き声に、言い返したくなっている
- 自分の声が、いつもより大きくなりかけている
- テレビや教材の音まで、うるさく感じ始めている
- 「早く泣きやませなきゃ」と焦っている
目安の項目は、親を評価するためのものではありません。離れるかどうかを早めに決めるための合図です。
距離の取り方3段階と、離れるときの一言
離れるといっても、いきなり家の外に出るわけではありません。私は、子どもの様子に合わせて、距離を3段階で使い分けています。
距離の取り方3段階
| 段階 | 父親がすること | 安全の条件 |
|---|---|---|
| 1. 同じ空間で耳(心)を守る | 少し距離を取り、イヤホンをして泣き声を和らげる | 子どもが視界に入る位置にいる。危険があればすぐ動ける距離を保つ |
| 2. 別の部屋に移る | 隣の部屋に移り、父親自身がクールダウンする | 子どもの声や物音が聞こえる範囲にいる |
| 3. ベランダや車に出る | 子どもが泣きながら追いかけてきて訴え続けるときに、お互いに1人の時間を取る | 妻がいれば、妻に一声かけてから出る。父親1人のときは、玄関が見える位置に座り、子どもが外に出てこないかを確認する。ベランダでは、室内の様子が見える位置にいる |
段階3は、子どもの年齢と家の状況によっては使えません。私の家には5歳前後の子どもが2人いて、最低限の危険は子ども自身も避けられる年齢だと判断したうえで、段階3を使っています。段階3を使うときも、私は子どもからできるだけ目を離さないようにしています。
子どもの年齢が低い場合や、子どもの様子が見えない間取りの場合は、段階1か段階2までにとどめてください。距離を取れないときは、イヤホンで耳を守るだけでも、親の消耗はかなり違います。
イヤホンを使うときは、子どもの声が完全に聞こえなくなる音量にはしないことをおすすめします。子どもの声が小さく届く程度にしておくと、危険の気配に気づけます。
離れるときの一言
離れるときに、私が子どもに実際に伝えている言葉です。
- 「いまは何を話しても、たぶん伝わらないと思う。落ち着くまで待っとくね」
- 「パパ(ママ)も気持ちに余裕がないから、いったん離れるね」
私が意識しているのは、次の3点です。
- 事実だけを伝える:子どもを責める言葉や、泣いていることへの評価は入れない
- 親の状態も正直に伝える:「パパ(ママ)も余裕がない」と言うことで、離れる理由が子どものせいではないと伝える
- 待っていることを伝える:「落ち着くまで待っとくね」と言うことで、見捨てるのではなく、待っていると伝える
無言で離れると、子どもは「置いていかれた」と受け取るかもしれません。一言を添えることで、離れる行動の意味が「放っておく」から「待つ」に変わる、と私は考えています。
落ち着いたあとの戻り方|謝る→受け止める→振り返る
離れたあとの戻り方で、親子の関係は大きく変わります。私は、子どもが落ち着いたら、次の3つの順番で声をかけています。
| 順番 | 親がすること | 言葉の例 |
|---|---|---|
| 1. 謝る | 親の側から、関係を戻す一言を先に伝える | 「さっきはごめんね」「言いすぎた」「離れてごめんね」 |
| 2. 受け止める | 子どもの気持ちを聞く。内容が良くても悪くても、まず受け止める | 「そうか、嫌だったんだね」「悔しかったんだね」 |
| 3. 振り返る | 次に同じ場面が来たときの方法を、一緒に考える | 「次はこうすればよかったね」「次はどうしたらいいと思う?」 |
謝るのは、親が負けることではない
「離れたのは正しい判断なのに、謝る必要があるのか」と感じる方もいると思います。
私が謝るのは、離れた判断が間違っていたからではありません。子どもにとっては、泣いている最中に親がいなくなった時間があったことは事実です。親の側から一言謝ることで、子どもは「パパ(ママ)は戻ってきてくれる」と確認できます。
強い言葉を使ってしまった日も、同じです。「言いすぎた」と先に伝えると、子どもも自分の気持ちを話しやすくなります。
振り返りは、受け止めたあとに
私が一番気をつけているのは、順番です。子どもの気持ちを受け止める前に「こうすればよかったよね」と伝えると、子どもには説教に聞こえてしまいます。
子どもの気持ちが、親から見て納得できない内容でも、まずは「そう感じたんだね」と受け止めます。受け止めたあとなら、振り返りの言葉が子どもに届きやすくなります。
振り返りのときの叱り方や伝え方をもう少し具体的にしたい方は、繊細な子の叱り方の記事も参考にしてください。
叱る声がつらいことを、妻(夫)にどう伝えるか
最後の見出しでは、私自身がまだできていないことを、正直に書きます。
私は、妻の叱る声もつらいと感じています。ただ、妻にはっきり伝えたことはありません。
理由は、私も子どもを叱るからです。自分も叱るのに、妻の叱り方について何か言う権利はない。頭の片隅で、ずっとそう思っています。
音が鳴り響く空間を私が苦手にしていることは、妻もすでに分かっていると思います。ただ、私は「叱る声がつらい」とまで言葉にしたことはありません。同じ迷いを抱えている父親は、少なくないのではないでしょうか。
伝えるなら、叱り方ではなく自分の耳の話として
私がこれから伝えるとしたら、叱り方の良し悪しの話にはしないつもりです。妻の叱り方を責める話にすると、妻は「じゃあ誰が叱るの」と感じるかもしれません。
伝えるのは、あくまで私の耳の特性と、私がどう動くかの話です。いま考えている言い方は、次のとおりです。
- 「叱るのが悪いと言いたいわけじゃない。大きい声が重なると、ぼくの方が先に限界になる」
- 「限界が近いときは、一声かけて少し外に出てもいいかな。落ち着いたら戻るから」
- 「子どもが危ないときに、ぼくの余力がなかったら、声をかけて助けてもらってもいい?」
妻がいるときに一声かけて外に出る、という動き方は、私がすでにしていることです。新しいお願いをするというより、すでにしていることの理由を言葉にして共有する、という形なら、伝えやすいと考えています。
判断表の右下(危険があるのに、当事者に余力がない場面)で妻(夫)を呼べる関係をつくっておくことは、子どもの安全のためにも大切です。
まとめ|子どもの泣き声がつらいHSPパパ(ママ)が、今日決めておくこと
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| つらさの正体 | 愛情不足ではなく、ネガティブな感情が乗った声を受け止める容量の問題。音が重なると限界が早まる |
| 離れてよい条件 | 子どもに危険がないとき。危険があるときは、パートナーを呼ぶか、親がそばにいる |
| 距離の取り方 | イヤホン → 別の部屋 → ベランダや車の3段階。子どもの年齢と見守りの条件で使い分ける |
| 離れるときの一言 | 事実だけを伝え、親の状態も伝え、待っていることを伝える |
| 戻り方 | 謝る → 受け止める → 振り返る、の順番 |
次にやることは、1つだけです。離れるときの一言を、今日のうちに1つ決めておいてください。癇癪が始まってから言葉を考える余力は、親にはほとんど残っていません。先に決めておけば、限界の手前でも言葉が出てきます。
つらさが続くときの相談先
泣き声がつらい日が続いて、「子どもに手が出てしまいそう」「もう限界だ」と感じるときは、1人で抱え込まずに相談してください。
- 親子のための相談LINE:こども家庭庁が設置している全国共通の窓口です。子育てや親子関係の悩みを、匿名でも相談できます(こども家庭庁|親子のための相談LINE)。受付時間は住んでいる自治体によって異なります
- お住まいの市町村のこども家庭センター:児童福祉法第10条の2に基づき、市町村が設置に努める、子育て家庭の相談窓口です。自治体によって名称が異なる場合があります(こども家庭庁|改正児童福祉法について)
- 緊急の対応が必要なとき:児童相談所虐待対応ダイヤル「189」
眠れない、気分の落ち込みが続くなど、父親(母親)自身の心身の不調が続くときは、医療機関に相談することも選択肢の1つです。
泣き声がつらいと感じる親は、子どもの気持ちを人一倍受け取っている親でもあります。容量は変えられなくても、手順は変えられます。
戻ったあとの振り返りを、もう一歩具体的にしたいときは、繊細な子の叱り方の記事へ進んでください。